2025年4月スタート!育児中の時短勤務で支給される新手当とは?
現在、「育児のための短時間勤務制度」は、育児介護休業法に基づき、3歳未満の子を養育する男女労働者に対して企業に導入が義務付けられています。しかし、時短勤務を利用すると勤務時間が短くなる分、給与も減ってしまうのが一般的です。
そこで、時短勤務による賃金の低下を補うため、新たに「2歳未満」の子を養育する場合に限り、手当(給付)が支給されることになりました。この制度は、2024年6月5日に成立した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」によって導入され、「育児時短就業給付」と呼ばれます。
この記事では、2025年度(令和7年)から新たに始まる「育児時短就業給付」について詳しく解説します。
また、育休中の手取り額を減らさないための新しい給付金「出生後休業支援給付」については、別の記事で詳しく紹介していますので、あわせてご確認ください。
【2025年4月スタート①】育休中も手取り10割の新制度とは?
これまでの短時間勤務制度とは?
現在、「育児のための短時間勤務制度」は、3歳未満の子を養育する男女労働者に対し、以下の措置を企業に義務付けています。
- 1日の労働時間を原則6時間とすること
ただし、「原則6時間」とされていますが、以下のような選択肢を組み合わせることも可能です。
- 1日7時間勤務など、6時間以外の短縮措置を設けること
- 所定労働日数を減らすことで、総労働時間を短縮する措置を組み合わせること
- 従業員が6時間以外の勤務時間を希望し、会社が認めた場合、その時間で勤務すること
このように、企業ごとの運用に一定の幅を持たせながら、育児と仕事の両立を支援する制度となっています。
時短制度を利用した場合の給与は?
「育児のための短時間勤務制度」は、労働条件そのものを変更するものではなく、もともとの労働契約に基づく勤務時間を短縮し、その短縮分に応じて給与が減額されることが一般的です。
なお、勤務しない時間数を超えて不当に給与を減額するなど、時短勤務を利用する従業員に不利益を与える行為は禁止されています。
〈給与の計算例〉
例えば、基本給が300,000円で所定労働時間が8時間の従業員が、1日2時間短縮(6時間勤務)を選択した場合、給与は以下のように計算されます。
300,000円 × 6時間 ÷ 8時間 = 225,000円
このように、勤務時間の短縮に応じた給与の調整が一般的ですが、会社によっては減額幅を少なくしたり、基本給以外の諸手当については、それぞれの手当の目的に照らして減額しない場合もあり得ます。
短時間勤務制度の利用状況
厚生労働省の資料によると、育児を理由とした短時間勤務制度を「利用している」または「以前は利用していた」の合計が、女性・正社員で51.2%、女性・非正社員で24.3%であるのに対し、男性・正社員は7.6%でした(令和4年度調査)。女性と比べ、時短勤務を利用する男性は少なく「利用希望もない」と答えた男性も41.2%にのぼります。

出典:仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査について|厚生労働省

現状では、育児のために短時間勤務制度を選択し、賃金が低下した従業員に対して給付する制度は存在していません。このため、収入が下がることを懸念し、育児時短勤務を選択することを避けるケースが男女ともに発生しています。
また、時短勤務を選択しているのは、ほとんどの場合女性という現実があり、子育ての負担が女性に偏りがちである状況が見て取れます。
新たに始まる「育児時短就業給付」とは?
育児時短就業給付とは、
・2歳未満の子を養育するため短時間勤務制度を利用している男女従業員を対象に、
・時短勤務中の各月に支払われた賃金額の1割を支給する制度です。
・時短勤務の開始日より前の2年間に12か月以上雇用されている(雇用保険の被保険期間が12か月以上ある)労働者
が対象となります。
働く親の育児と仕事の両立を金銭的な支援で後押しすることにより、時短勤務中の収入減が緩和され、子育て中の従業員が柔軟な働き方を選択しやすくなります。
具体的な計算例
例えば、基本給が300,000円で所定労働時間が8時間の従業員が、1日2時間短縮(6時間勤務)を選択した場合、短縮後の基本給は225,000円となりますが、この場合、育児時短就業給付として、雇用保険から以下の金額が支給されます。
225,000円 × 10% = 22,500円(給付額)
したがって、この従業員の収入は以下のようになります。
225,000円(給与)+ 22,500円(育児時短就業給付)= 247,500円
この例では、労働時間が75%(6時間/8時間)に短縮される一方で、収入は約82%(247,500円/300,000円)を維持できるため、時短勤務による収入減が一定程度緩和されることになります。
ただし、時短勤務後の給与と給付額の合計が、時短勤務前の給与を超えないように調整されるため、一定の賃金額を超える場合には給付率が引き下げられる点には注意が必要です。



休業時の育児休業給付金の給付率は67%(181日目以降は50%)であることから、休業よりも時短勤務を、時短勤務よりもフルタイムで勤務することが、支援額の大きさから推進されていることがわかります。
育児時短就業給付のメリット、期待されることは?
育児時短就業給付の従業員側のメリットとは?
・時短による収入減がカバーされることで、より時短を選びやすくなる。また利用した従業員の生活が安定する。
・これまで利用が少なかった男性従業員の利用増も見込め、より夫婦の状況に合わせ、柔軟な働き方が可能となる。
・より早期の職場復帰が容易になり、キャリア形成への支障が緩和される。
メリットを享受できるのは従業員だけではありません。企業側のメリットは以下のようなものが挙げられます。
・復職後の離職を防止できる効果がある(復職後、育児と仕事の両立が困難だと感じ離職するケースが存在)
・制度利用を推奨することで、より働きやすい職場環境を社内外にアピールでき、満足度を高めることができる。
・より早期の職場復帰が容易になることで、人手不足の解消に繋がる。
育児時短就業給付のデメリット、懸念点は?
労務担当者の事務負担増
今回の改正に限ったものではありませんが、新たな給付制度が創設されることにより、新たな事務手続きが発生します。特に女性の時短勤務利用率は高く、申請頻度は高いと考えられるので、今後の情報収集と適切な対応が求められます。
マミートラックの助長
マミートラックとは、子どもを持つ女性が産休や育休から職場復帰した際に、自分の意思とは関係なく出世コースから外れてしまうことをいいます。マミートラックは従業員のモチベーションを低下させ、人材確保の面でも不利に働きます。
育児時短就業給付が始まると、時短勤務を利用する従業員が増え、時短勤務の長期化・固定化した際、それがマミートラックを助長する可能性があると指摘されています。
他の時短勤務利用者やフルタイム勤務者との不均衡
時短勤務を選ぶ理由は育児だけでなく、家族の介護や自分の病気などを理由に労働時間を短縮する人もいるため、公平性の観点から慎重な検討が必要になると指摘されています。またフルタイムで働く従業員からすれば、時短勤務により労働時間が減っているにもかかわらず、フルタイムで働く場合と同程度の収入を得ることができることもあり、不満が生じる可能性があります。



育児のための短時間勤務制度は子が3歳未満の場合が対象になりますが、今回給付の対象を2歳未満に限定している理由は、時短勤務の長期化・固定化(マミートラックの助長)を防ぐことにあります。
労使ともに上手に活用したいものですね。
3歳以降の柔軟な働き方選択制度も視野に入れて
育児介護休業法では、2025年10月以降、3歳~小学校就学前の子を育てる従業員に対して、柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが義務付けられています。具体的には、短時間勤務制度、始業時刻等の変更、テレワーク、保育施設の設置運営、新たな休暇の付与の中から、会社が2つ以上選択して、用意する必要があります。
3歳以上の子を養育する従業員に対しても、従業員からの要望が高い時短制度を導入する会社が増えることが予想されています。時短勤務者の対象が広がる中、仕事の配分、他の従業員との兼ね合い、人員確保への対応が必要になると考えられます。
まとめ
育児時短就労給付は、2025年4月開始予定の新しい給付制度です。2歳未満の子を育てる時短勤務者の収入減を補うことで、時短制度をより利用しやすくし、子育て中の従業員が柔軟な働き方を選択しやすくなります。
また、育児介護休業法では、3歳以降においても、短時間勤務制度を含む柔軟な働き方を用意する会社が増えると予想されます。
普段から対象となる従業員が利用しやすいような社内環境の整備しておくことと、申出があった際の適正な対応が求められます。
2025年からの改正内容が既に数多く発表されており、人事労務担当者は多くの確認事項がございますが、一緒に一つずつ対応していきましょう。







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