育児介護休業規程に労使協定は必要?届出の有無や留意点を交えて解説
育児介護休業規程とは、従業員が育児や介護のために取得できる休業の条件や手続きを定めた、就業規則の一部です。
当規程では、休業のほかに、育児・介護のための休暇や所定外労働、時間外労働、深夜業の制限などが規定されています。分量が多く、法改正も頻繁に行われるため、就業規則(本則)とは別規程として設けられることが一般的です。
この育児介護休業規程を作成する際、雛形などで目にする「労使協定により~」という文言。この「労使協定」は締結する必要があるのか?締結しないとどうなるのか?労働基準監督署への届出の有無、留意点等、つまづきやすいポイントを解説していきます。
労使協定で定める内容
そもそも労使協定とは?
事業所ごとに労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者と事業主との書面による協定をいいます。36協定がその代表格です。
では、育児介護休業規程において、労使協定はどのような場合に必要になるのでしょうか?以下のようなケースで締結が求められます。
- 各制度利用の対象者を限定する場合
- 産後パパ育休(※)の申出期限を2週間超1か月以内とする場合
- 産後パパ育休の就業を可能とする場合
※「産後パパ育休」は通称であり、正式名称は「出生時育児休業」です。育児介護休業規程や労使協定には正式名称が明記されることが一般的です。
以下具体的に確認しましょう。
厚生労働省の労使協定例は下記から確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/06.pdf
1.各制度利用の対象者を限定する場合
育児・介護休業(出生時育児休業を含む)、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務などの制度は、通常、要件を満たす従業員が希望すれば利用できるものです。ただし、法律で定められた範囲内で、一部の従業員を対象から除外することが認められています。
例えば、「育児休業」においては法律上、以下のように規定されています。
育児休業を希望する従業員(日雇従業員を除く)は、1歳未満の子と同居し、養育する者に限り育児休業を取得できる。ただし、有期雇用従業員については、申出時点で子が1歳6か月に達する日まで労働契約が満了しない者に限り、育児休業を取得できる。
この規定に、労使協定を締結することで、特定の従業員を対象から除外することが可能です。例えば、以下のような従業員であれば、法律上除外できることとなっています。
1.入社1年未満の従業員
2.申出から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
3.週の所定労働日数が2日以下の従業員
このように、入社直後の従業員や週の労働日数が少ない従業員など、制度適用が難しい場合は、労使協定により、制度利用の対象外とすることができます。
2.産後パパ育休の申出期限を2週間超1か月以内とする場合
産後パパ育休の申出期限は原則として2週間前ですが、労使協定で次の2点を定めることにより、申出期限を1ヶ月前まで延長することができます。
- 雇用環境の整備等の措置(法律上の義務である雇用環境整備措置を上回る内容)
- 産後パパ育休の申出期限(2週間を超え、1ヶ月以内に限る)
この2点のうち「雇用環境の整備等の措置」は、次の1~3のすべてとなります。自社の状況を踏まえた具体的な措置の内容を定める必要があります。
- 以下のうち、2つ以上の措置を講ずること
- 育休等※に関する研修の実施
- 育休等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 自社の労働者の育休等の取得事例の収集・提供
- 自社の労働者へ育休等の制度と育児休業の取得促進に関する方針の周知
- 育児休業の申出をした労働者の育休等の取得が円滑に行われるようにするための業務の配置または人員の配置に係る必要な措置
- 育休等の取得に関する定量的な目標を設定し、育休等の取得促進に関する方針を周知すること
- 育休等の申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取り組みを行うこと
※育休等とは、育児休業および産後パパ育休を指す。
これにより、職場環境の整備を進め、育児休業への理解を促進しつつ、業務への影響を最小限に抑えることができます。

「上記1~3は必須事項か?」というご質問をよく受けますが、これは産後パパ育休の申出期限を2週間以上に設定する場合のみ必要です。したがって、すべての会社に必須ではありません。
3.産後パパ育休中の就業を可能とする場合
通常の育児休業では、休業中の就労は想定されていませんが、労使合意のもとで一時的・臨時的な就労は可能です。
産後パパ育休では、さらに柔軟で利用しやすい制度を目指し、労使協定の締結と当事者間の合意に基づいて、一部就労が認められています。
業務が多忙で産後パパ育休の利用を控える懸念がある場合、以下のような内容を労使協定に明記し、締結することが効果的です。
(出生時育児休業中の就業)
〇条 出生時育児休業中の就業を希望する従業員は、就業可能日等を申出ることができるものとする。
労働基準監督署への届出は必要か
労働基準監督署への届出は不要です。
労使協定には届出が必要なものと不要なものがありますが、当協定は届出が求められていません。
労使協定締結後、育児介護休業規程(就業規則)と併せて、従業員がいつでも見れるよう周知することで効力が発生します。
労使協定締結における留意点
先述した項目を育児介護休業規程に明記していたとしても、実際に労使協定を締結していない場合は、申出があれば当該労働者は対象となり、除外することはできません。(実は締結していない例、少なからず目にします)
・労使協定には有効期間があります。有効期間満了のタイミングで再締結がされないと、有効期間切れとなり無効となります。
有効期間切れで無効とならないようにするためにも、下記のように、原則自動更新とするのが安心です。
本協定の有効期間は、◯年◯月◯日から◯年◯月◯日までとする。ただし、有効期間満了の1か月前までに、会社、組合いずれからも申出がないときには、更に1年間有効期間を延長するものとし、以降も同様とする。
労使協定の締結は必要か?
労使協定の締結は、あくまでも会社の任意です。
上記で説明したように、制度利用の対象者を限定したい場合や、産後パパ育休の運用を柔軟にしたい場合にのみ締結が求められます。
特に小規模事業所では、労使協定の締結が少なく、50人以上、100人以上の規模が大きくなるほど締結されているケースが増える傾向にあります。小規模事業所では、育児介護休業規程の整備だけで手一杯で、労使協定まで手が回らないことが多いのかもしれません。
締結していないとどうなるのか?
労使協定を締結していない場合、法律で定められた対象者には、希望に応じて休業等の制度利用を認める必要があります。たとえば、入社1年未満の従業員や、週2日以下しか働いていない従業員が育児休業を希望した場合でも、取得を許可しなければなりません。(なお、育児休業給付金が支給されるかについては別途確認が必要です。)
労使協定を締結し、適用除外とした従業員から制度利用の申出があった場合の対応
たとえば、入社1か月の従業員から育児休業の取得について質問があった場合、労使協定により育児休業の対象者ではないことをまず説明します。
ただし、出産予定日の6週間前からの産前休業および出産後8週間の産後休業について、請求があれば、労使協定に関わらず、必ず取得させる必要があります。(産後8週については強制的な休業で、本人が請求した場合も労働させてはいけません)
産後休業が終わった後、育児休業の取得ができない場合は、そのまま職場に復帰することになります。この際、復帰後の従業員には、子の看護休暇や年次有給休暇、会社独自の休暇制度の取得を促し、急な欠勤にもできるだけ柔軟に対応することが望ましいです。なお、会社から退職を促すような行為は「妊娠等を理由とする不利益な取り扱い」となり、違法となるので注意が必要です。
最後に
育児介護休業規程における労使協定は、会社事情に応じて制度利用の対象者を限定したり、産後パパ育休のルールを緩和したりする場合に必要で、締結は任意となります。
働きやすい職場環境づくりのためには、各制度利用の対象者を可能な限り広げることが理想的ですが、会社の資源には限度があります。そのため、必要に応じて対象者を慎重に選定し、会社運営を円滑にするために労使協定を締結することを検討いただければと思います。









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